土木は経験工学

以前、私は「日経コンストラクション」を読んでいた。この投書欄を見ると発注者側(国、自治体)受注者側(コンサルタント、施工業者)共技術の低下を嘆く声が毎号のようにあった。 私は土木は現場が原点だと思っている。だから土木技術者は現場と接することが最優先である。上述のような技術力低下は自分の現場にさえ接する機会が少なくなったからであると思っている。

土木工事は、野外の構造物であって、一品生産がほとんどである。上部工が同一であっても基礎工が違う場合もある。機械や電気製品のように同一条件下で同じものを数多く作るものと大違いである。例えば、道路工事。設置場所の気候・地形・地質、線形、住民意識・密集度や動植物の生態系などの環境などによって設計も施工方法も異なってくる。これらを的確に判断して、良い設計・施工ができるのが技術力である。

そこには教科書やマニュアルがあっても全ての現場にそのまま適用できるものは少ない。それ故、対象物をどう設計をし、どのような施工方法を採用するかは、担当者の経験に培われた判断(技術力)による。

経験を豊富にすることは現実の事象を手掛けることである。しかし、私たち長い人生であっても実際に経験できることは少ない。だから支部の会員からの投稿にもあったが、他の現場を見、工事誌を読み、先輩などの体験談を聞き、何故そういう現場になっているのか担当者に聞き考えることも経験である。

現場にはいろいろな技術がある。発注者側の技術、施工者側の現場運営、作業員の技術がある。現場に行く時間が無くても、仕事として現場に行かなくても街を歩いているときなどに工事現場に遭遇することがある。善しに付け悪しきにつけアレ!と思うことがある。これも現場に接するという意味で現場経験である。

出来るだけ多くの経験を積むことが、土木技術者の技術力の向上に繋がると確信している。先の雑誌の先の投書のようなことは少なくなるのではないだろうか。